Site Update : 2005.5.1
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教育>心理学とはどんな学問かII 

 

歴史

 最も古くは、心の働きを生起させる実体を突き止めようとする学問であったが、これは後世になって霊魂心理学と呼ばれ、形而上学の一部であった。やがて近世になり、経験科学が誕生するにつれて心理学も霊魂の探求を捨て、経験的にとらえる心の側面、すなわち意識を対象に取り上げ、その特性あるいは構成を究明しようとする意識心理学が興り、他方では心の機能的側面を追求しようとする機能心理学が現れた。しかし、これらの立場も、意識は個人の主観的経験であり、研究者に直接知りえないものであるため、それを対象にする学問は公共性を持ち得ないと批判され、研究者が直接観察可能な行動を研究対象としてこそ公共性、客観性をそなえる科学になりうるとする行動主義の主張を契機として、心理学を行動の科学とする観点が大勢を占めるようになった。
  行動の科学としての心理学は、個人として、あるいは集団として人間が示す行動の特性、およびその仕組みを説くことを中心として、広く生活体の行動の機構を究明することを目指している。そのためには他の諸科学との提携が必要になり、細胞や器官を扱う生理学や神経生理学、人間の集団や社会を扱う社会学、環境に対する人間の適応関係を扱う文化人類学とは特に関係が深く、また生物学や経済学、政治学、さらに部分的には歴史学や哲学、宗教学とも関連してくる。
  行動からの立場をとる心理学者は、生活体に各種の刺激が与えられた場合、それに対して反応する生活体の行動がいかなる仕組みによるのかを明らかにすることを目指すが、行動が刺激によって生ずる生理過程、神経過程の仕組みに基づいて理解される以上の特性を示す場合には、この特性を導き出すために科学的構成体を導入して、理解しようとする。このようにして導入された科学的構成体は、生活体に投入される刺激(独立変数)とその結果として生ずる生活体の行動(従属変数)とをむすびつける仲介変数として扱われる。心理学者が社会的行動を取り上げる場合には、社会学者や文化人類学者によって考察されている集団や社会現象に底在している個人の行動特性、集団が個人に及ぼす影響、集団成員間の相互作用などを究明しようとする。心理学を生物科学とみるか社会科学とみるかは研究者の選ぶ学問体系によって決まるといえるが、 年代になると、前述のように心理学を行動の科学と呼ぶ傾向が顕著となってきた。心理学者は従来、生物に目を向けていたが、最近になって、たとえばエレクトロニクスを利用して作られた機械の仕組みにも関心を示し始めている。
  心理学の研究分野が拡大するにつれて多くの専門分野が形成され、実験心理学、生理学的心理学、比較心理学、産業心理学、社会心理学および臨床心理学などの専門学者があらわれているが、さらに個体の示す各種の行動から知覚、記憶、感情、欲求、思考および学習などの側面を研究する専門学者も出現している。しかし、個体のこれらの諸機能は相互に関連した統一体をなしていることも学問的定説になっており、したがって感覚を知覚から切り離して論ずることはできず、また知覚を記憶や学習から、さらに、学習を情動や動因から切り離して考えることもできない。そのうえ、生活体をその環境から切り離したり、過去の事態を無視して現在の環境を論ずることもできないのである。
  心理学は哲学の一環として誕生したが、形而上学的心理学の課題は、心の実体を突き止めることに続いて、経験が実在をどこまでとらえうるかという認識を問題にすることであった。心理学が哲学から独立したのは十九世紀後半であり、当初、経験科学として出発した心理学は、生理学者や物理学者の示唆をうけ、実験法を採用して実験心理学の名のもとに誕生した。まず生理学者 ・H・ウェーバー 物理学者 ・ ・フェヒナーらが刺激とそれによって生起する感覚との関係を実験的に測定し、フェヒナーはこれを精神物理学と称した。やがてドイツの ・ヴントはライプチヒ大学に心理学実験室を創設し、知覚の実験的研究を展開し、続いて ・エビングハウスや ・ ・ミュラーらが記憶過程に、ビュルツブルグ学派が意志過程や思考過程に実験的研究を施した。
  心理学研究者は霊魂の考察を捨てて、心身の問題や意識の問題に関心を示したが、年代にアメリカで起こった行動主義は、意識の考察をも捨てて行動を取り上げた。それに対してゲシュタルト心理学派は、従来の意識心理学を批判したが意識そのものを不要とはしなかった。意識すなわち主観的経験は、ヴントの説いたように心的要素の結合したものとみなすことは不当で、要素に還元することのできないゲシュタルトとして具現するというのが彼らの見解であった。同派のW・ケーラーは、心的現象がゲシュタルトとしてまとまりのある全体的過程を具現するのは、脳中枢の生理過程のゲシュタルトに呼応するからだと想定し、心的現象と中枢生理過程との間には同型的関係が成立するという仮説を提起した。ゲシュタルト心理学者は、やがて場理論と力学説を根底にして理論を展開させ、知覚現象は刺激条件の下で、知覚の場の力学的構造に即して、できるだけ「よいゲスタルト」に体制化されると説き、さらに行動は環境の認知によって生起した行動の場の力学的構造に即して推進されることを説いた。ゲシュタルト心理学が日本に紹介されたのは昭和初年であるが、それまでヴント流の意識心理学が優勢であった学会に大きな影響を与え、特に知覚研究者の研究意欲を沸かせ、多くの業績に寄与した。
  行動主義の行動理論は当初、行動を要素過程に還元し、この分子的行動に関してそれを喚起する刺激との結合関係をとらえ、そこに行動の基本法則を見出そうとしたが、このような要素観はゲシュタルト心理学者の批判にさらされた。新行動主義者の時代になると、かれらは行動を全体としてとりあげ、このような全体的行動は刺激から直接喚起されるのではなく、媒介変数として生活体に能動的な性質を導入することによって行動生起の法則が成立すると見なした。ゲシュタルト心理学者によれば環境の認知は知覚現象を説くにも不可欠の媒介概念とされたのに対し、行動主義、新行動主義の学者は認知を不要な概念とした。とくに新行動主義者は、刺激すなわちインプットはただちに生活体に動機を引起し、反応に変わる諸過程を活動させ、行動すなわちアウトプットを生起するものとみなした。有能なゲシュタルト心理学者はナチスの埠頭後アメリカに移ったが、その流れをくむ学者は認知説を唱え、特に学習理論に関して行動主義の反応説と対立を示している。
  以前には哲学者や倫理学者の関心事であった欲望や情動的行動、そのほかに美的、道徳的意識なども経験心理学では研究課題に取り上げているが、19世紀末に精神分析を創始したフロイトは、これらの問題を意識下に存在する潜在要因に関連づけて新しい解釈を施した。彼の深層心理学説は、特に精神異常の解明に貢献し、現代の臨床心理学者にとっても重要なよりどころとなっている。

 

心理学の方法
心理学に於いて用いられている伝統的方法の中には、直接操作したり、測定したりできない要因も含まれている。各種の統計法は、心理学においても最も広く採用されている研究手段で、行動的資料の多くのものを有効に処理し、記述することができる。単純な統計的平均を求めただけでも個人間、集団間、あるいは個人と集団の問題点の比較ができるが、相関統計法を用いれば、たとえば職業興味テストの得点が、将来その職業で成功するか否かをどれだけ確実に予測することができるかを判定しうる。また、例えば不安神経症の患者に鎮静剤を与えた場合のような心的結果を算定する事は、偶然に起こった事例から推定するよりもはるかに有意義である。
  研究対象である生活体の行動にいかなる統制も加えずに観察する自然的観察法は、資料収集の最も単純な方法であり、学校の教室で起こる出来事の詳細な記録、幼児の行動の詳しい日記、あるいは集団討議の記録などに採用されている。




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