Site Update : 2005.5.1
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教育>震災と心理学 

 ここでは災害が起こった後の対処について述べます。 

 災害心理学 心理学の中で最近の新しい研究部門。
 心に加えられた傷の意味である「トラウマ」という言葉は知られるようになってきたが、後に様々なストレス障害を引き起こす疾患を心的外傷後ストレス障害、省略して、PTSD;(Post-traumatic stress disorder)と呼ぶ。災害心理学が扱うのは 大災害に対する人間の心理、行動や心への現れを分析し災害の予防、心のケアに努める。

阪神大震災後ライフラインはストップし、近代医療での治療はほぼ不可能となった。転送時の搬送手段は救急車に頼るほかなかったが、自家用車が道路にあふれだし、渋滞のため事実上作動不可能となった。また適切に医療機関の選択がなされなかったせいで、転送される患者も多かった。そのため手遅れになったケースがあった。家具や家の残骸の下敷きになって救助された人が、見た目には何ともないからと軽視していた結果、実はクラッシュ症候群であった、ということも無知からくる悲劇だったといえよう。特にクラッシュ症候群には迅速な集中治療が必要なのである。
  これらの問題を解決するためにはまず多数の医療機関の機能が消失するような広範囲な被災状況でも平常時と同じく、重症患者の治療が行えるようにすることがなによりも重要である。また、被災地外の病院への搬送を迅速に行えるようにすることも必要である。そのためには医療従事者が患者の受診機関の適切な選択が行うことができるように普段から、教育することが必要である。患者が自分で動ける場合、自分で病院までくることがある。その時、いきなり大病院に来ては限りある治療手段が行き渡らず、特に重症で緊急治療を要する患者が助からなくなることも起こりうる。患者側にも適切な機関を訪れるよう教育していくことが必要である。
 また普段から避難訓練だけでなく、救急医療の知識、人工呼吸、心臓マッサージなどが行えるようにする訓練(普通救命講習)を行うことも必要である。普通救命講習は近くの消防署に問い合わせると受講できる。

 震災後、住居を失った人々も修繕をほぼ完了し、物質的な問題が回復した後で重要となってくることは心理的な問題へのアプローチである。物質的な問題は、住居の損傷度などで測定可能である。また外傷なら目に見える。しかし心の問題は数量化できないわけであるし、不合理な側面も多い。
  現在、心身外傷的ストレス障害(PTSD)が問題となっている。これは、災害、戦争といった通常人間が体験するものを超えた体験に対する反応として生じる精神的な障害である。心理的な問題は必ずしも被災した直後に起こるわけではない。初期的なショックとしては、「しばらくゆれてる感じがする」、「眠れない」、「もう一度起こるのではないかと不安になる」といった経験をする。しかし時間が経つと、だれでも体験するような問題から、これからどうやって生きて行くべきか、生死、住居などの問題といった個人的なものに移行してくる。その際心理的な葛藤が生じてくるのである。この結果、外傷的結果が生々しく思い出される一方で、その外傷と関連した刺激の持続的な回避、外界に対する反応の低下が生じる。症状としては睡眠障害、過剰な警戒心、易刺激性などの心理的覚醒状態、抑鬱症状、不安症状などが認められることもある。見た目には立ち直ったようであっても、こうした心理的な問題は見えないところで確実に進行しているのである。
  治療のためには、外傷を再体験するのを防ぎながら、対人関係などによる保護的、支持的な環境を作り上げるようにする。症状の軽減を目的とした抑鬱薬、抗不安薬などの薬物投与や、精神療法も効果的であるといわれている。
  しかし、国家レベルではこのような心のケアに十分取りかかっているとは言えない。震災後には臨床心理学会が、ホットラインを設け、24時間体制で心理相談を行うと同時に心に不調を感じたら精神科・神経科で相談するようよびかけていた。日本の文化的な文脈ではこれはかなり困難だと思う。というのは未だに精神療法、薬物療法(睡眠薬や安定剤を用いたもの)に対して偏見があり、精神科や神経科の門をくぐるのに抵抗を感じている人が多いからである。

「もし胃に不調があったが異常なしと判断され神経的なものであるから精神療法をうけるようにいわれたら従うか」という質問を大学生にしてみたが、従うと答えた人は全体の35%であった。これは、やはり神経的な病気をタブーをみなしていることを示している。日本の勤勉さといった国民性が精神的な病気を「怠け病」などとレッテルを貼って排他し、そのことについてフランクに話す雰囲気がないという背景もあるだろうが、医学に対する無関心から来ているのだと思う。日本の医師ー患者関係のほとんどは、患者が医師に診断、治療全てを委託するような形を取っている。そのため、素人である自分は別に医学について知らなくてもよいという考え方が浸透してしまったのだと考えられる。肺炎は抗生物質を用いなければ治らないという知識はあるのだが、抑鬱剤は体に有害だ、くせになると思ってしまう。怪我をすれば病院に行くが、心に怪我をしても放っておく・・。
  こころのケアが必要です、という以前にもう少し精神疾患に対する偏見に対抗するために、普段から教育を地域の組織ぐるみで行うべきではないだろうか。
 
  参考文献

 新版精神医学事典 1993 弘文堂

 関連ページ

 災害に関する英単語(震災の際の英語ガイド付)

 心理学総合案内 こころの散歩道

 

 クラッシュ症候群

長時間圧迫されることで壊死した筋肉から、ミオグロビンやカリウムなどの有害物質が発生し、心臓や腎臓の機能を低下させる。血液の流れが回復すると、全身に有害物質が広がり、急速に容体が悪化。急性腎不全や心不全を招いて死に至るという疾患。




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