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教育>データ処理法各論

 

 最近では、コンピューターの普及とソフトウェアの発展により、以前には大型汎用コンピューターでしか利用できなかった統計パッケージ・プログラム(SAS,SPSSなど)がウインドウズ上で手軽に利用できるようになった。
  また、ウインドウズ判でもデータをこのように処理しなさいという命令文(コマンド)を自分でつくらなければばらなかったのであるが、最新版ではアイコンをクリックするだけで統計的な処理が行えるようになった。このようなソフトを用いれば、統計を数学的に理解できなくても、複雑な計算を自分でしなくても、データを処理できる。しかし、問題を発見し、仮説を設定し、科学的な手続きによりデータを収集し、どの収集法、統計的手法を用いるか決定し、分析結果を解釈することは自分でおこなわなければならない。コンピューターが行ってくれるのは、統計的な計算、有意差検定、グラフをつくって、データを見やすくすることである。ここでは主に、統計パッケージを使う際に必要とされるデータ収集法、統計的手法を決定するための基礎知識について述べる。
 

1.研究法

1-1 観察

 実在する集団あるいは個人になんらかの影響を加えることの意図なく研究の対象とする方法。
 長所 対象者の言語報告を介することなく、観察者自身が、目前に起こっている行動や出来事を、観察記録するので現象と観察者との「直接性」が保てる。
 短所 研究対象自体のもつ複雑さ(a)行動の生起する刺激状況 (b)行動主体(c)反応や言動の様式、のそれぞれに固有の複雑さのために、観察法だけで、行動の法則性や因果関係を客観的にとらえることが困難である。

1-2 実験

 関連するすべての因子を統制した情況において、人為的にある刺激を導入し、これによってこの刺激とその結果とに関する因果関係を検証することである。
1)実験者の外的な行為を含んでいる。(人為性)
2)実験者の持つ仮説の検証を意味している。(検証性)
3)そのために実験状況の統制を含んでいる。(統制性)

 長所

 問題にしている変数以外の刺激変数群ないし個体変数群の影響を人為的にコントロールしたうえで、問題の変数が反応変数群にどのような影響をおよぼすかを組織的に観察できる。
 所定の手続きに従いさえすれば誰でも臨むときに結果を再現できる。
 周到に準備した上で精度の高い観察データが効果的に得られる。

 短所 

 研究者の条件操作によって人工的に社会的場面がつくられるので、現実世界から遊離したり迫真性が乏しくなりがちである。
 研究対象が人間であるので、研究者の意図や研究目的を憶測し、現実の場面なら観察されるはずの反応や行動を故意にゆがめる場合がある。
 実験においては、これを防ぎ、被験者の自我関与を高めるために、作為的に本当の目的を隠し、偽の目的を被験者に教示するというやり方(deception)がかなり頻繁におこなわれるが、これに関しては倫理的立場などから、さまざまな議論、批判がなされている。 

1-3 調査

 研修者が研究対象に問いを発し、研究対象がそれに答えるという形式でデータを収集する方法。

 長所  

 短時間で多くの情報を得ることができる
 「内面意識」に属する事柄を全体として客観的に知るためにはほとんど唯一の科学的研究法
 「実験室事態の非日常性」批判に対する回答となる。  
 短所 

 条件統制が厳しく、従属変数の測定も大ざっぱである。
 扱いうる行動が制限される。被験者のプライバシーに関する問題。

1-4 検査

 既に標準化されている手続きや測定尺度を利用し、知能、適性、性格、態度、興味、動機などの属性についてのデータを収集する方法。

 長所

 実施する人が異なっても、比較的安定した結果が得られる。
 同じ検査を用いれば、以前のデータや他の研究者との比較が容易である。

 短所

 仮説検証には向かない。
  他の研究法と併用するのがのぞましい。

1-5 研究法の選択

 研究法の選択は、個々の研究テーマに応じて決まってくるものである。そこで、問題意識や仮説の性質に基づいて研究を一応タイプ分けして、そのうえで、どのようなタイプにはどの研究法が適しているかという形で対応関係をしめすことにする。

1-5-1

(a)法則定立的(nomothetic) 研究 人間の一様性を追求する立場
→観察、実験、調査

a.仮説検証的(hypothesis testing) 研究
 研究者が事前に検証すべき(時に反証すべき)仮説を用意しておいて、収集されたデータがその仮説と一致するか否かを吟味する。理論志向型向き。 →主として実験 副次的に観察と調査

b.探索発見的(exploratory testing)研究 
 特定の仮説を事前に用意することはせずに、むしろ得られたデータの中からなんらかの規則的関係や新たな研究仮説を発見することに重点をおく。
 データ志向型向き →主として観察と調査 副次的に実験

(b)個性記述的(idiographic)研究 人間の多様性を重視する立場   
→観察、検査
事例研究(ケーススタディ)
1-5-2

(a)少変数型研究 研究で注目する変数が少ない→実験

(b)多変数型研究 研究で注目する変数が多い →調査

1-5-3

(a)長期的研究  ある変数の長期的影響に興味を持つ→観察、検査、調査

(b)短期的研究  ある変数の短期的影響に興味を持つ→実験
2.測定の妥当性と信頼性

 測定とは、ある規則に従って事象に数値を割り当てることであり、心理学の研究では、実験、調査、検査、観察などによって測定がなされる。
 心理学的測定とは、行動を数量化することである。尺度とは行動と数字を対応化させるものであり、行動の法則性を考える目安なので、規則を明らかにしておくべきである。
 測定は「妥当性」「信頼性」といった科学的基準をいつも配慮しなければならない。
「妥当性」は調査者が対象にたいして行っている観察が調査しようとしていることを実際に把握するものになっているかどうかということ。「信頼性」は、同一の現象を繰り返して測定したときに、その結果に大きな差違はないかということである。

3. S.Sスティーブンスの尺度分類

 得られる測定値の意味と、それに可能な統計的処理は、これらの水準に依存している。

 名義尺度 (nominal scale)
  一般に異なる対象を互いに区別するために用いられる尺度である。男性に1女性に2という数値を与える場合がこれにあたる。このとき用いられる数値は、カテゴリー毎に異になってさえすれば、1対1対応で他の数値に変換することが可能である。

 順序尺度 (ordinal scale)
対象のもつ属性に関して順序づけが行われる場合に用いられる尺度である。たとえば、自分が好意を感じる順にA〜Eの学生を並べる場合がこれにあたる。この場合に問題となるのは、測定値間の順序でありその間隔には何の意味もふくまれていない。1番好きな人と2番目に好きな人の差、4番目に好きな人と5番目に好きな人の差というのは同じではないのである。

 間隔尺度 (interval scale)
測定値間の順序だけでなく、その差の大きさ(間隔)にも意味がある尺度である。例えば、36°Cと37°Cの差は、35°Cと37°Cの2倍という関係が成り立つ。

 比率尺度 (ratio scale)
  間隔尺度の場合、測定値の間隔には意味があるが、原点には本質的な意味がない。
温度も摂氏0°Cというのは、温度がないわけではないし、華氏に変換すると原点が変わる。これに対して、比率尺度には絶対原点が存在する。重量0kg長さ0mというのは、文字通り重量や重さが無いことを示す。比率尺度では対応する測定値の比が一定になる。

 順序尺度や、名義尺度によるデータには、本来数値を表す必然性がないので、質的データ、間隔尺度や比率尺度によるデータを量的データと呼ぶこともある。
 また、量的データには、飛び飛びの値しかとりえない、人数や個数、回数などのデータ (離散変量 discrete ariable) と、時間、年などのように連続線上のあらゆる値をとりうるデータ(連続変量 continuous variable)がある。

3.記述統計と推測統計

 記述統計とは、データを整理し、数学的形式によって要約し、表現することである。
 データ間の関連を知るための相関もこの中に含まれる。
 推測統計とは、母集団を観察する代わりに標本を観察して、それをもとに母集団の特性を推測して分析することである。実験や調査を行う目的は、研究対象になった被験者、被調査者だけに関する知識を得ようとするよりはむしろ、人間一般とか大学生全体といった大きな集団のもつ特徴を調べたり、一般的な人間の行動傾向や心理過程についての知見を得ることにある場合が多く、よく用いられる。

4.対応あり(従属)と対応なし(独立)

 対応なしとは、異なる被験者を各処理水準に無作為に割り当てることで、(1人1試行しかしない。)対応ありとは同一の被験者を全ての処理水準に参加させること(1人が複数回の試行をする)である。

5.パラメトリック検定とノンパラメトリック検定

 2群のデータの平均値の差を検定する際もちいられるt検定は、次のような仮定のもとで使用される。
(1)両群のデータがどちらも正規分布をする母集団から抽出された無作為標本であること。
(観測値の母集団分布に関する仮定) 
(2)両群のデータが属している母集団の分散が等しいこと。
  (分布のパラメータに関する仮定)
  このような仮定をもつ検定をパラメトリック検定、持たない検定、母集団分布に依存 しない統計量をもちいて行う検定をノンパラメトリック検定という。
  ノンパラメトリック検定は
(1)母集団分布に関する仮定を必要としない
(2)順序尺度、名義尺度によって測定されたデータに対しても適用できる。
(3)検定力からみたとき、少数データに適した検定法である。
(4)検定のための計算が簡単である。

6.仮説検定法〜差を吟味する〜

 統計手法を選択し、出力結果を読みとるために必要な知識
(途中の計算過程の説明は省略)

(1)帰無仮説を設定する。(AとBには差がない、とする)
(2)データの差を算出する。
  2つの分散の差の検定→F検定
  2つの平均の差の検定→t検定
  度数や%の差の検定 →χ2検定    
(これらは検定の名前と変数2つを指定すると計算してくれる)
(3)臨界値(棄却域と採択域をわける分岐点を決める。)
  有意水準(危険率ともいう。ある仮定を設定したとき、めったにおこらない事象 が起こる確率)は、普通5%であるが、精度を高めたければ、数値を下げる。
  出力結果には差のあるぎりぎりの有意水準が表記されるだけで、差があるかないかまでは教えてくれない。0.05以上の値が出ているときは差がないので、結果をまとめる際にn.s(nosignificant:有意差なし)と表記する。
(4)データの値が採択域に入ったら、差がないとし、仮説を採択棄却域に入ったら差があるとし、仮説を棄却する。       

引用文献

 飽戸 弘 「社会調査入門」日経新書 1971

 末永 俊郎 「社会心理学研究入門」 東京大学出版社 1987

 宝月 誠・中道 實・田中 滋・中野 正大 「社会調査」 有斐閣 1989 

 三井 宏隆 社会心理学の実験をめぐる諸問題 実験社会心理学研究 1979
第19巻 71-79

 森 敏昭 吉田 寿夫 編著 「心理学のためのデータ解析テクニカルブック」  
北大路書房 1990

 安田 三郎 社会調査の計画と解析 東京大学出版 1970 219-234 




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